家計調査雑感

『労働調査』No.222,1986年2月号

家計調査雑感

鈴木不二一

(雑務の片手間に書きなぐった粗末な印象論ですが,評者の調査屋としての原点を表出した文章のひとつです。)

家計調査のルーツをたどってゆくと、この分野は(いやあらゆる社会調査がといってよいかもしれないが),まず個票(つまり家計簿)の分析から開始された。エンゲルスしかり、ロウントリーしかり,また日本では横山源之助という先例がある。
家計データの個票の中から,彼らは労働者生活がはらむ共通の諸問題を見事に析出したといえる。バラバラにみえる個人個人の諸問題には、実は各人に通底する部分が存在し,またその共通部分を解決することによってのみ個人の問題は解決しうるという認識こそ,社会問題という言葉の恨底に横たわるものであろう。「われわれは公民として病み、かつ貧しい」(柳田国男『明治大正史―世相編』)のであり,だから,社会が,たとえば,労働組合がその解決に乗りだすのである。


もともと,労働組合にとって,調査主体と調査対象の分離はありえないのが立前である。認識する主体も,その対象とする世界も同じ組合員という共通項で結ぼれているのだから。この事実を,それは立て前にすぎないといって切り捨てる前に,立て前を生かしきる工夫をすべきだろう。
調査の有効利活用の道は,結局のところ,労働組合という立場をふまえた”運動としての調査活動”を,原則に忠実に展開することを通してもっとも着実に切り拓かれていく。


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