2011-01-01から1年間の記事一覧

アメリカにおける富裕階層への富の集中について

アメリカにおける富裕階層への富の集中について [メールマガジン「オルタ」96号(2011.12.20)掲載稿の改訂版] ───────────────────────────────── 多民族国家アメリカはもともと多様な国であった。極論する人は、天国もあれば地獄もあり、アメリカン・ドリ…

アメリカで広がる所得格差

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年11月号アメリカで広がる所得格差 ニューヨークはアメリカン・ドリームの象徴のような街だ。全米から,そして世界中から,人々は夢を抱いて,この地にやってきた。ニューヨーク在住日本人向けの,あるタウン誌の題名は,ドン…

格差拡大と雇用の二極化

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年10月号格差拡大と雇用の二極化 所得分配が平等化するパターンはいくつかのルートが考えられる。一つは、「貧困の平等」である。誰でもが等しく,平等に貧乏になる。国破れて,山河のみが残り,生活の荒廃が全士を覆うような…

ハルーン・ファロッキ『労働者は工場を去って行く』(1995)

リュミエール兄弟『工場の出口』上映から100年後の1995年に,ドイツのハルーン・ファロッキ監督は,『労働者は工場を去って行く』(Arbeiter verlassen die Fabrik)を世に問いました。この映画は,『工場の出口』へのオマージュともいえる作品で,冒頭と最…

年をとっても生産性が落ちるとはかぎらない

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年9月号年をとっても生産性が落ちるとはかぎらない「高齢者は相対的に生産性が低い」と、しばしば考えられている。しばしばどころか、ほとんど固定観念と言ってもよい。そこで,高齢化にはどうしても暗いイメージがつきまとう…

最初の映画は労働映画だった(補足)

リュミエール兄弟の『工場の出口』は,映画における「演出」のはじまりという点でも注目されてきました。労働映画との関連では,次の記事(抜粋)が興味深い論点を指摘しています。 1.ペドロ・コスタ監督 映画美学校短期集中講義(2004/3/12〜14) ポルトガ…

最初の映画は労働映画だった

1895年12月28日,パリのグラン・カフェでのシネマトグラフ興業のポスター 映画を最初に発明したのは誰か,については諸説があります。単純に時期の点でいえば,1891年のエジソンによる「キネトスコープ」に軍配があがるでしょう。けれども,これは覗きからく…

初期労働映画4編

Youtubeでみつけた最初期の労働映画4編を紹介します。最小限の見出しだけつけておきましたが,いずれも暫定的なものです。労働史の専門家の詳しい説明がほしいところです。お気づきの点,コメント欄にご記入いただけたら幸甚です。 1.リュミエール兄弟 「…

「平成23年度社会生活基本調査」を応援します

日本が誇る社会統計調査のひとつ「社会生活基本調査」は,わたしたちが1日の中で,「いつ,どこで,誰と,何を」行なったかを克明に記録し,過去1年間に行なったさまざまな活動についても詳細に調べている,素晴らしい統計です。今年は5年に一度の調査年に…

経済社会「新生」への課題

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年8月号 経済社会「新生」への課題 「良い暮らし指標(Better Life Index)」は,OECD (経済協力開発機構)創立50周年記念プロジエクトの柱の一つだ。所得,雇用,教育,環境などの幅広い生活分野を対象に,人々の暮らしの質を総…

日本の科学技術リテラシー

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年7月号日本の科学技術リテラシー 近年、科学技術と社会の関係を問い直す動きが活発である。1999年の「世界科学会議(ブタペスト会議)」が「社会における科学、社会のための科学」という理念を表明したことは画期的だ。その理念…

日本の労働組合の動向と課題(英文プレゼン資料)

日本の労働組合の動向と課題(英文プレゼン資料) Current Developments and Future Challenges of the Trade Unions in JapanTrade_Unions_in_Japan.pdf presented at the Program on Industrial Relations and Human Resource Management, July 4, 2011, o…

転換期の価値意識:競争と協調の両立への模索

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年6月号 転換期の価値意識:競争と協調の両立への模索 日本列島は今、周期的におとずれる「大地動乱の時代」(地震学者・石橋克彦氏の言葉)に入っていることがほぼ確実のようだ。「東日本大震災」は、地震学者の多くがかねてよ…

市場経済と資本主義の“毒抜き”

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年5月号市場経済と資本主義の“毒抜き”Globescan社が発表した国際世論調査の結果は興味深い。「自由市場経済は最善のシステムか」との設問ヘの回答結果は、国による違いこそあれ、総じて自由市場経済ヘの信認の揺らぎを示す。ハ…

蔓延する官公労組たたきの危険性

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年3・4月合併号蔓延する官公労組たたきの危険性:「新しい公共」の創出こそが急務 保守派の巻き返しに揺れる米国政局。保守系知事による公務員労組を標的とした反組合攻勢が米国労働界を震掘させている。ウィスコンシン州スコ…

「スト資金」(特集:あの議論はどこへいった)『日本労働研究雑誌』2011年4月号掲載

3月25日発行の『日本労働研究雑誌』2011年4月号,「特集:あの議論はどこへいった」に,次の記事を書きました。 ○スト資金─「新しい現実」の中で古い議論の再生を 鈴木不二一 「過去において研究の蓄積があったテーマについての議論を振り返り、その現在的意…

代助とスノーウィの近況

スノーウィ:地震,怖かったヨー。 (2011年3月19日撮影) 代助:落ち着け! (2011年3月19日撮影)

オンブバッタ異変

オンブバッタ異変マンションの半地下にある庭に鉢植えやらプランターを置いてささやかな植物栽培をしている。シソを植えたプランターに,あるときオンブバッタ Atractomorpha lata> が棲息するようになった。わが家の大事な客人である。彼等は,11月末から12…

資金余剰の使い道

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年2月号資金余剰の使い道 若者は就職氷河期に泣き、壮年者は賃下げ・リストラの恐怖におびえ、高齢者は福祉の薄情さを嘆く。一億総下向き社会の中で、唯一、企業の資金余剰のみが右肩上がりに推移している。1998年以来急拡大し…

子供たちの健康格差

NTT労組機関誌『あけぼの』2010年12月・2011年1月号子供たちの健康格差福祉(welfare)は語源的にさかのぼると、肉体的な健康状態を意味していた。確かに、健康は幸福の根源であり、社会の安心・安定の最大の基盤だ。けれども、一方で、社会的なつながりの強さ…

アニメでも労働の世界への扉が開くのか

犬も歩けば労働に当たる(第17回)『月刊連合』2010年12月号アニメでも労働の世界への扉が開くのか 連載も最後になる今回は不思議なことにこれまで一度も取り上げたことのなかったアニメをネタにしてみよう。通常、アニメが労働を描くことはほとんどない。文字…