アメリカで広がる所得格差

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年11月号

アメリカで広がる所得格差


ニューヨークはアメリカン・ドリームの象徴のような街だ。全米から,そして世界中から,人々は夢を抱いて,この地にやってきた。ニューヨーク在住日本人向けの,あるタウン誌の題名は,ドンずばり『アメリカン・ドリーム(略称:アメ☆ドリ)』(発行部数2万部)。そのキャッチ・コピーには「頑張る日本人を応援します!」とある。

頑張ってつかもうとする夢が大きい分だけ,その実現の確率は低くなる。勝者と敗者の間の落差もまた,大きくならざるをえない。浮かぶ瀬の高さと沈む淵の深さ,光と影が交錯する,振幅の大きなカオスの世界が,ニューヨークの本質だ。

アメリカの縮図のような街ニューヨークでは,経済活動の振幅の幅も,所得と富の格差の大きさも,より増幅してあらわれる。
 たとえば,近年のアメリカにおける所得格差拡大傾向を示す指標としてしばしば用いられる所得上位1%層の所得シェアをみてみよう。財政政策研究所の分析によれば,2007年の上位1%層の所得シェアは,アメリカ全体では23.5%であったのに対し,ニューヨーク市をとると,実に44.0%にも達していた(『ニューヨークにおける所得集中化』,2010年)。

ウォール・ストリート占拠」(Occupy Wall Street)抗議行動グループが,スローガンのひとつに掲げる「99%の声を代表して,金融権力の強欲さを批判する」という意思表明の背景には,このようなニューヨークにおける極端な富と権力の不平等が存在している。

ところで,最近発表されたニューヨーク会計検査院の報告書『ニューヨーク証券業(Securities Industry)に関する年次報告書』 (2011年10月)は,ニューヨークにおける富の集中傾向に,産業という側面から照明をあてている点で興味深い。


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