幸せとは

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年12月号


幸せとは


鋳物の街・川口を舞台とする青春ドラマ『キューポラのある街』の最後の方で、主人公の女子中学生を演じる吉永小百合が、今でもグッとくる決めぜりふを言う。

「一人が五歩進むよりも、十人が一歩ずつでも前に進む方が、だいじなのよ」。

言うまでもなく、幸せは皆の願いだ。けれども、各人がばらばらに、その願いをかなえようとしても、うまくいかない。それは皆で求め、育てるものなのだ。

閣議決定した「新成長戦略〜『元気な日本』復活のシナリオ〜」が、「国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけでなく家族や社会との関わりも大きな影響を持つ」と述ベ、「新しい成長および幸福度について調査研究を推進する」ことを方針に掲げたことを受けて、昨年は「幸福度」をめぐる議論が盛り上がりを見せた。

閣議決定を受けて2010年12月に設置された内閣府「幸福度に関する研究会」は、年間の討議をふまえて中間報告をとりまとめ、「幸福度指標試案」を提起した。そうした中で、1972年以来「国民総幸福量(GNH)」の成長を国家目標に掲げ、近年世界の注目を集めているブータン王国ワンチュク国王夫妻来日は、ブータンへの旅行人気まで高まるというブームを引き起こした。

ところで、「幸福」の増進という目標と、その実現のための「幸福度」の測定という課題は、そう簡単に決着がつきそうもない難問だ。安易な決着は避けるべき、人類社会の永遠のテーマといった方が良い。とは言え、近年の議論と研究の進展の結果として、「幸福」を規定する要素について多くの知見が蓄積され、次第に問題とされるべき領域も明らかになりつつある。

最近の調査の中で、とりわけ注目すべきは、個人の主観的幸福感と社会的絆や友人・知人との人間関係との間に強い相関関係があることを示す、いくつかの結果が得られていることである。



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