オンブバッタ異変

オンブバッタ異変

マンションの半地下にある庭に鉢植えやらプランターを置いてささやかな植物栽培をしている。シソを植えたプランターに,あるときオンブバッタ <Atractomorpha lata> が棲息するようになった。わが家の大事な客人である。彼等は,11月末から12月頃,子孫を残す活動を行った後に,最後の時を迎える。地中に産みつけられた卵は5月から6月に孵化して,ふたたび親たちと同じ一生を繰り返す。冬に向かう季節に,終焉の時を迎える彼等の食料をどうやって確保するかが,わが家のプランター農業の重要な課題となった。

昨年の冬,一匹の雌バッタが,とても食用になるとは思えないシクラメンの鉢植えに,仲間たちと離れて住みついていた。最後まで緑色のきれいな容姿を保ったままだったのが印象に残っている。毎年暮れになると,このシクラメンの鉢をはじめ,寒さに弱い植物は室内に収納する。雌バッタが生涯を終えたシクラメンの鉢は居間に運んで春をまってもらうことにした。

そして今年の1月末頃,そのシクラメンの鉢の中の,おそらく,あの雌バッタが産んだものと思われる卵から,続々とバッタが孵化してしまった。暖かい室内にいたので,初夏になったと勘違いしたのだろう。数ヶ月も早く生まれてしまった彼等は,放っておけば食糧難で死ぬしかない。家族総出で捕獲して,虫かごに収納した。庭にほそぼそと生えていたハコベや,サラダ用のベビー・リーフの中のやわらかそうな葉等々,試行錯誤で食料をなんとか確保して,育ててきた。3月11日の地震の時も,棚の上に置いていた虫かごは転がり落ちずにすんだので,苦難の月日を乗り越えて成虫に育った20匹ほどが,いまなお健在である。早く春になって,庭のプランターに彼等の食料が生えてくるのを待っているところだ。



 サニーレタスの鉢植えにとまって,食欲超旺盛なオンブバッタ君(2011年3月19日撮影)