年をとっても生産性が落ちるとはかぎらない

NTT労組機関誌『あけぼの』2011年9月号

年をとっても生産性が落ちるとはかぎらない

「高齢者は相対的に生産性が低い」と、しばしば考えられている。しばしばどころか、ほとんど固定観念と言ってもよい。そこで,高齢化にはどうしても暗いイメージがつきまとう。

もちろん、年を取れば、肉体的能力は衰えてくることは否定できない。けれども,一方で,人間関係ヘの配慮やものごとをうまく取り仕切る能力は,経験とともに蓄積されることがよく知られている。それらが肉体的能力の衰えを補って余りあるとすれば,加齢と生産性の関係は必ずしも通説通りになるとは限らない。

ドイツ・マンハイム大学高齢化経済研究所(MEA)の調査チームが最近発表した研究は,この問題に本格的な実証的メスを入れた注目すべき成果の一つである。その結論は,端的に言えば、「年をとっても生産性が落ちるとは限らない」というものである。

高齢化社会には,まだまだ未知の部分が多い。この研究は,根拠のない思い込みで高齢化社会の政策論を進めることの危うさを明らかにしている。今後,実効ある政策のためにも,急速な高齢化が進むモノづくりの国・ニッポンの経験に,新たな照明を当ててみるべきだ。


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図1 年齢と誤操作の頻度,深刻度に関する回帰分析結果

図2 年齢と深刻度加重誤操作度数
(=生産性指標:値が低いほど生産性が高いことを示す)
の回帰分析結果

出所:Boersch-Supan, A. & Weiss, M.(2011).’Productivity and Age: Evidence from work teams at the assembly line’