はてしなきリストラの後に
『月刊・連合』2001年9月号、連合総研短信
右を向いても、左をみても、とんと明るい話題のない今日この頃。テレビの報道番組も苦慮しているらしい。最近の日曜日の夜、やたら「衝撃」続きの事件ばかりで、いいかげんウンザリしていたところ、視聴者の気分転換のためか、キャスターが「さて明るい話題をひとつ」といって紹介したのは、リストラで某メガネサロンの職を失った従業員たちが、自分たちで会社を作って成功しているというニュースだった(フジテレビ 2001年9月9日 22:30〜 "EZ!TV")。思わず拍手を送った。
「安売りを競うよりは、現場の職人の腕と眼を活かして、顧客のニーズにあった良心的なメガネ作りを」というコンセプトが受けて、着々と売上を伸ばしているという、この会社の経営方針は、きわめてユニークである。曰く、「会社が利益をあげることは、従業員のためにならないことが、リストラの中で、つくづくわかった。利益を追い求める限り、リストラの恐怖から逃れることはできない。したがって、我が社では会社に利益を残さず、できるだけ従業員に配分することを原則にしている」という。そんな経営が持続できるのかとも思うけれども、そういいたい気持ちは分かる。
ここで指弾されている「会社の利益」は、おそらく株主利益極大化をめざす短期的利益のことだろう。起業して成功を収めるような優秀な従業員をリストラした会社は、長期的利益を損なったことになる。このような傾向が普遍化しているとすれば、日本の産業社会の将来は危うい。
果てしなきリストラの後に、会社と従業員の関係は、本当に変わってしまったのか。職場はどうなったのか。それを確かめるための実態調査を、いま、連合総研は企画している。