犬も歩けば労働に当たる 第3回

『月刊連合』連載記事 犬も歩けば労働に当たる 第3回(2009年9月号) 
電脳ウサギは「つくりびと」の夢を紡げるか
モノづくりによって新しくモノが創り出されることには、心ときめく感動がある。創り出される対象はなにも物質的なモノに限らない。有形無形を問わず、自然に人為を加えて有用なモノを生み出すことすべてに「モノづくり」概念は拡張できる。区別のために「コトづくり」ということばを使う人もいる。古来の日本語には「つくりびと」という魅力的なことばがあったという。本誌の表紙を飾っているさまざまな職業人たちの笑顔には、まさに「つくりびと」の輝きが宿っているといえそうだ。
そもそも、日本語の「つくる」ということばは、「自然に人為を加える工作」全般をさし、「つくりびと」には、工匠たちだけでなく農民もまた含まれたという。産業に従事する職業人全体を示す表現といってよいだろう。カネつくりよりもモノつくりを重視する日本の「生産主義的」伝統に注目するロナルド・ドーア教授の議論とも無縁ではあるまい。モノづくり基盤の衰微や勤労精神の風化をくいとめ、21世紀日本の産業社会を活気に満ちたものとするためには、職業や産業の文化的基盤にまで深く思考をめぐらすことが重要だと思われる。
と、いささか大上段にふりかぶったけれども、ここから先は街ネタの小話におつきあい願いたい。とりあげるのは秋葉原である。「工作」というと、評者のような世代には、すぐに部品の街秋葉原が連想されてしまうのだ。

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