ITと労働・雇用

『生活経済政策』No.50(通巻466号),2001年3月,pp.1-7.

ITと労働・雇用

ITとは便利な言葉である。なによりも短い。ワープロでいえば,たったのキー・ストロークふたつで足りる。そこに,なんでもかんでもつめこめるのだから,物書きにとってこれほど便利なものはない。まさに効率的といえよう。数多のメディアにこの言葉が踊るのもむべなるかな。
こうした現象は,なにも今に始まったことではない。幕末・明治の頃の翻訳語成立期,あるいはそれ以前からも,漢字による複合語は,「よくはわからないが、何か重要な意味があるのだ」という暗黙の了解のもとに,人を魅了し,惹きつけてきた(柳父章翻訳語成立事情』岩波新書)。翻訳をとばしてカタカナ語、さらにはアルファベットそのままの略語が用いられるようになった昨今でも,基本的な構図は変わらない。
とはいえ,言葉の詮索ばかりやっていても不毛なことは論をまたない。要は,説明すべき肝心なことをブラック・ボックスの中に入れてしまうことに注意を怠らなければよいのだ。本稿でも,ITという言葉を多用する。情報通信技術と6文字で書くよりも便利であるし,なによりも、筆者に与えられた課題が「ITと労働・雇用」なのだから。ただし,ITには情報通信技術という以上の意味は込めないつもりである。
以上の前提にたって,ここでは,近年におけるIT (情報通信技術)の発展が,人々の働き方や雇用の量と質に与えている,あるいは今後与えるであろう影響について概観し,その正負両面の効果をふまえた,ありうべき対応について考えてみたい。


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