労働映画の操作的定義とその適用

久しぶりに労働映画について考えてみました。

まず,労働映画とは何か。次のような操作的定義を出発点に考えてみてはどうかと思っています。

  • 労働映画の定義(試案)

労働映画とは,記録映画,劇映画を含め,次の規準を満たす映像記録作品である。

(1) 労働者の仕事と生活の実態を描くもの。

労働者の仕事と生活の実態を直接の描写対象とするものだけでなく,なんらかの形でそれを描く作品を広く含めることとする。例えば,記録映画のなかでは,生産現場を描写する産業映画,企業PR映画,科学・技術映画など,あるいは,労働者の仕事と生活に関連する文化映画,教育映画(児童教育映画,社会教育映画)などを広く含むものとする。また,劇映画でも,労働者の仕事と生活の実態にふれる作品を広く包含してとらえるものとする。

(2) 労働者の仕事と生活の維持・向上をめざす運動や取り組みを描くもの。

労働者の仕事と生活の維持・向上をめざす組織としての労働組合とその運動を描くもの,またその運動推進のためのプロパガンダをテーマとするもの。

労働者の仕事と生活の維持・向上に関わる政治,社会運動,文化運動などを描くもの,その運動推進のためのプロパガンダをテーマとするもの。

労働者組織あるいはその関連組織だけでなく,政府,地方自治体,市民団体,企業などの主体が関わる取り組みであっても,広い意味で労働者の仕事と生活の維持・向上,あるいは労働者の意識改革に関わるテーマを描くものを含めて考えることとする。

(3) 広い意味で労働者の意識改革をはかることを目的とするもの。

労働者状態の正確な認識と,その主体的改革を促進するために,労働者の意識改革をはかることを目的とするもの。

労働組合,運動団体,政府,自治体,企業,業界団体など,さまざまな主体による,教育,啓蒙のための教育映画,文化映画等をひろく含む。また,労働者の意識改革を目的とした,映像作家によるさまざま前衛的実験映画も含めて考えることとする。


おわかりのように,上記の定義はウェッブの労働組合の定義の応用です。(1)が「労働者状態」の認識で,(2)(3)は労働者状態の中に問題を見出し,その解決をはかろうとする主体的実践に対応します。


より細かい定義を行うと同時に,ジャンル分け(劇映画と記録映画,後者の中の,プロパガンダ映画,産業映画,教育映画,企業PR映画等々)も必要となってきますが,それらは上記の3つの包括的な操作的定義の系論として展開できるのではないかと考えています。


上記の定義を適用して労働映画リスト(暫定版)を作ってみました。下記をご参照ください。

日本の労働映画リスト(暫定版)
 約200本,リストアップしてあります。これからまだまだ追加していく予定です。